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湯蚤

主にダンゲロス、ジャンプの話題など

鈴木皇帝の棒術

皇帝
何故鈴木の気弾(ステッキ)攻撃が回避不可なのか、
それは、精神(プライド)を犠牲にして不意打ちを仕掛けているからだ!

ううむ… こんなに頑張っても全然カクカクしている…
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  1. 2012/01/18(水) 01:04:31|
  2. 鈴木皇帝
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ダンゲロスより鈴木皇帝のまとめ

ホーリーランド3に投稿したキャラです
鈴木皇帝でかい

●鈴木 皇帝(すずき こうてい)。3年生。
●鈴木三流の兄。三回留年している。
●ADV(アドベンチャー)の会・会長。探偵が冒険するための会である。
●モノクル、黒いマント。ステッキを持ったその姿は探偵と言うよりは怪盗。
●自称探偵王。勘が物凄く良い。
 そのため高確率で正しい推理結果を導き出すことができるが、
 勘で答えているだけなので、その推理の道筋はてんで的外れである。
 現実の推理なんてそんなものである(偏見)。
●未来探偵紅蠍(園城寺色々になる前)を勝手にライバル視している。

必殺技
『推拳(推理の鉄拳)』 【消費精神 1】
 敵と戦いながら敵の動きを推理する。
映画「シャーロック・ホームズ」でも使われていた戦闘法。
すべて人の行動には必ず理由があり、冷静な判断力と緻密な観察によってそれら動きを予測することはたやすい。
しかし皇帝の場合は野生の勘で動いている。
当然勘は外れることもあるし、当たったとしても敵の攻撃を避けれるかはわからない。


○その他PC
○渡辺 千代子(わたなべ ちよこ)。2年生。女性。
○皇帝の後輩。何故か鈴木の助手をしている。常識人。皇帝より頭が良い。
○皇帝からは親しみを込めてワタ君と呼ばれている。




プロローグSS(ゲームを知らない人でも読めるように書かれています)

【鈴木皇帝の冒険】第一章


「 2015年
 世界格闘大会を開催する。
 なお、今大会は特別ルールとして、世界全土に戦場を設けた。
 世界中から厳選された、優れた格闘家諸君の参加を楽しみにしている。
 以上・・・『U』 」


Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ


 ――以下に書き記す顛末から、鈴木皇帝は世界格闘大会に参加することになった――

 希望崎学園には複数の探偵組織が存在する。紫野縁のダンゲロス探偵倶楽部。迷道家達の探偵同好会。鈴木皇帝のADV(アドベンチャー)の会。
 助手の渡辺千代子が鈴木皇帝のいる『ADVの会』の部室に入った時、鈴木皇帝は机に脚を投げ出して、学校新聞を読んでいた。

「こんにちは。先輩。」

「やあワタ君じゃないか! それで、その手紙をくれたのはどんな人物だったんだい?」投げていた脚を隠すように下ろし、新聞の横から目をだして渡辺を見る。

「……まだ何も言ってませんし、何も見せていませんけど。よくわかりますね。手紙を預っているって。」鞄をぶつけないように、ゆっくりと扉を閉める。

「アッハッハ簡単な推理さワタ君! 君は今、制服ではなく私服を着ている。 なら君は一度家に帰る必要があったはずだ。 と言うことは君はいつもどおり、俺に遭遇するのを避けて、授業が終わるやいなや真っ先に帰宅したことになる。 気になるのは、君がスカートではなくパンツ!見ても嬉しくない方のパンツを履いていることだ! ……惜しくも俺は、君ん家のタンスを漁ったことはない。」

「当たり前です!」

「しかしいつも熱心に観察する限り、ワタ君の私服は基本スカートだし、君自身も以前そうだと言っていた。おそらく君はスカートを履きたくない事情があった。……例えば、自転車に乗るとかね。君の家と学園の最短距離間には、俺も良く行く手作りパンの「みかづきベーカリー」がある。今日は売れ筋ナンバー1のみかづきクロワッサンの割引日で、時間的に君が自宅から自転車でここまで来る途中に、丁度焼きたてのそれが出来上がったはずだ。食いしん坊のワタ君がそれを逃すわけがない。 みかづきクロワッサンは美味いが、出来立ては熱いし、飲み物なしですぐに食べられる分量ではない。その小さい鞄にも入りきらない。 パンを買わず、自転車でここへ来るほど君は急いでいた。 ……では何故それほど急いでいたのか。」

 皇帝は一度ここで間をおき、もったいぶって話し始めた。

「君がもっているその鞄は学生鞄ではない。『ADVの会』用の探偵道具の入った鞄だ。わざわざ家に学生鞄をおいて、それを持ってきたということは、君が家に帰った時点で何かが起きた。あるいは何かを思いつき、俺の所までやってきた。 困りごとがあり助けを求めてきたのなら、まず俺に電話をくれるはずだ。君は義理堅い人間だから、人にものを頼むときはそうするだろう。 電話が無かったなら、逆に俺に文句があるか、俺に関係した面倒事に巻き込まれた可能性が高い。 実際この部屋に入った時のワタ君の表情は明らかにイライラしていた。」

「そうですか?」

「そうそうそんな表情。まぁ、腹が減っていたというのもあるのだろうがね……! しかしイラついているのなら、その鞄を普段通りゴミ袋でも振り回すように扉へガッツンガッツンぶつけて入ってくるはずだ。 だが今日は馬鹿に丁寧に入ってきたね。その小さな鞄に入る大きさで、扱いに気をつけるとなると、小さな封筒の可能性がある。その鞄にはでこぼこした探偵道具が詰まっていて、封筒くらいしか入るスペースは無い。 おそらく宛先は俺、鈴木皇帝宛てだったんだろう。君宛なら、君は来る前に内容を電話で話すだろうからね。 差出人は、俺に直接届けるより、君に届けさせるほうが早く済むことを知っていたのか。 ただポストに入っていただけなら、ここまで急いで来ることは無いだろうから、その誰かが君の家に直接訪ねてきたことになる。そして、その封筒をすぐに俺に手渡すように頼まれた。……と! どうだい、簡単な推理だろう!アッハッハッハ!」

「もっともらしい推理ですけれど、違いますね。」
「えっ。」

「まずはじめに、私が私服を着ているのは家に帰ったからではありません。先輩に見つからないようにしていたのは確かですが、魔人料理部の友達に会いに行っていました。」

「おお、あの魔境へか! 俺も行ってみたいな!」

「あそこはエプロンどころじゃどうにもなりませんから。あらかじめ汚れても良い服を学校へ持ってきていたんです。それで私服を着ました。幸い被害はちょっとした小爆発、擦り傷と切り傷で済みました。そこで美味しいお菓子をごちそうになったので、別にお腹はすいていません。ちなみに通学路にある美味しいパンの「みかづきベーカリー」は今日から休店で、一週間後に閉店するそうです。残念ですが。」

「えっ……。」

「この探偵鞄ですが、今日は料理部へ行くことが決まっていたので、汚れても大丈夫な鞄を持ってきました。中身は全部家に置いてきたので、今この中には料理部でもらったお菓子のおみやげが詰まっています。 それで帰ろうとした矢先、噴水広場でサングラスを掛けた黒服の男性に話しかけられて、先輩にこれを渡すように頼まれたんです。」渡辺は鞄ではなく、服のポケットから白い封筒を取り出す。
「あと、イライラしているのは生理前だからです。」封筒を手渡した。

「あ、そう……。」推理の外れた皇帝は、少し残念そうにそれを受け取った。
「しかし! 結果は当たっていた! そうだろうワタ君!?アッハッハ!!!」両手を広げて笑い出す皇帝。

「それで先輩。これをくれた黒服の男性に心当たりは?」

「無い!」皇帝は子供のようにビリビリとその封筒を破り始めた。
 取り出した一枚の白い紙。皇帝はそれをちらりと見やると、懐からライターを取り出し、火を点けた。
「わ熱っちち!!」床に落とす。紙は燃え上がり、黒焦げになった。

「うわ。先輩、何してるんですか。」驚いたと言うよりは、若干引いた様子の渡辺。

「知らないのかいワタ君? こういう怪しい手紙は十中八九、あぶり出しになっているもんだぜ!」

「あぶり出しだろうが何だろうが燃やしちゃ駄目だろ!!」思わず声をあげる。「で、中身はちゃんと読んだんでしょうね……?」

「よ……読んだとも。」
「なんて書いてありましたか?」
「『 U 』って字が書いてあったな。 時間がなくってそれしか読み取れなかった。」
「あっただろ明らかに時間は! 燃やすならせめて読んでからにしろよ!」
「まあ待て、中身は大した問題じゃない! どうせブラフさ。それよりその黒服が怪しいな!そいつはまだ遠くへ行っていないはずだ。探しだして目的を聞き出そうじゃないか!」

「……まあ、手紙の内容が事件の依頼なら本人に直接訊くべきでしょうね。 先輩がそう言うかと思って、あらかじめその黒服さんに言っておきました。この時間だと先輩と入れ違いになる可能性があるから、と。あと、料理部のお菓子を試食して欲しいという理由をつけて、噴水前で待ってもらっています。」

「さすがだワタ君!優秀な助手だぜ!!」
「私も厄介ごとは早く片付けて帰りたいですから。」
「よし、さっそく怪しい黒服を捕らえるぞ!」
「場合によっては先輩を生徒会に捕らえてもらいますからね。」


Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ


【鈴木皇帝の冒険】第二章


 のんびり歩く渡辺を置いて、皇帝は全速力で噴水広場へ向かった。途中、皇帝がクラスメイトの友人達に絡まれたため、渡辺はそれに追いついた。「エンペラー(皇帝のあだ名)お前!また後輩の可愛い女の子を連れ回してるのか!」「許せん!死ね!苦しんで死ね!」皇帝がスキンシップという名の友情リンチを受けている間に、渡辺は噴水広場へたどり着いた。

「あれ、黒服の人がいない……?」
「ハァハァ、何!? どういうことだワタ君!?」追いついた皇帝。既に満身創痍である。
「わかりません。いや、よく見て下さい。これ……!」渡辺は地面をみる。……血痕が数滴!
「ち!血だ!血だ!ワタ君これは! 事件だ―――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!」
「うるせぇーっ!」渡辺が耳をふさぐ。 周囲を見渡す。広い校庭。下校中の生徒。グラウンドには運動部。吹奏楽部の楽器の音。
「ふむ……。」皇帝は血のついた地面に屈みこみ、ステッキに付いた虫眼鏡を方眼鏡で覗いた。この虫眼鏡が役に立ったことは今まで一度もない。

「千代子ちゃんどうしたの? もう帰ったと思ってた。」そこへ、後ろ髪を短く結んだ少女が近づいてきた。先ほど話題に出た渡辺千代子の友人。料理部の川上しずきだ。ボロボロのエプロンを身につけている。

「しずきさん……。ここで黒服の男の人、見なかった?」
「え、さあ、わからない。……黒服?」
 渡辺は、日が暮れるまで家に帰れないことを覚悟した。その時!

「いたぞ!あそこだぁ――――――――――――――――――――――――――――ッ!!」皇帝が指を指す先には、校舎の影からこちらを覗く黒服の姿! 黒服はこちらの姿を見とめると、サッと姿を隠す。
「待て待てえええええええェェェェい!!」駆け出す皇帝。
「ごめんしずきさん!またね!」渡辺はその後を追う。


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「な、なんだとォ―――――――――――――――――――――――――!?」うるさい。
 一足早く校舎裏までたどり着いた、皇帝の絶叫。
「どうしましたか?」渡辺が追いつく。見ると、校舎裏は高い塀と校舎で囲まれた行き止まり。自転車置場として使われている場所だ。そこに黒服の姿はない。

「じ、人体消失……!これぞ事件!事件だ!」皇帝は感動に打ち震えている。
「いませんね。どこへ行ったんでしょう。」渡辺が冷静に辺りを見回す。塀には自転車用の屋根。校舎の2階部分には窓があるが、手の届く位置ではない。地面にも特に目立ったところはない。
「よし!現場を隅から隅まで探れ! 証拠を集めるんだ!」皇帝はまた虫眼鏡を片眼鏡で覗き始めた。
「…………。」渡辺は立ち止まったまま、顎に指を当て考え始める。

 普通推理とは「ありえない」事に目を当て、遡及的に考えるものだ。そうすれば自ずと状況も条件も、犯人候補も絞られる。「ありえない」事こそが、可能性を狭めてくれる。通り魔殺人よりも密室殺人の方が犯人の特定が容易なのはこの為だ。
 しかし、魔人の絡む謎でそれは通用しない。魔人の可能性は無限だ。遡及的に考えていては絶対に真実へたどり着くことはできない。渡辺はそう考えていた。その場合の推理に必要なのは、やはり魔人能力である。

「わかったぞワタ君!黒服はおそらく魔人なのだろう!魔人的脚力によって壁を蹴り窓まで跳躍し、今頃は校舎内にいるはずだ!」
「…………なるほど。」

 これで黒服が魔人だという線はなくなった。渡辺は皇帝の魔人能力を、必ず「推理の過程を間違える」論理能力だと考えている。結果が当たるかどうかはオマケにすぎない。この能力を利用し、渡辺はこれまで数々の難問を解き明かしてきた。

「私も遅刻しそうなとき、自転車で来ることがあります。こういう時、校舎の入り口から離れたこの位置に自転車置場があると、不便なんですよね。」渡辺は真っ直ぐに歩き、校舎の壁に手を当てた。するりと体が壁に入り込み、校舎内へと侵入した。
「お、おお!そんな所に抜け穴が!よく気付いたなぁワタ君!」
「先輩の言う通り、この壁を蹴って上の窓まで行こうとする魔人は何人もいるはずです。にも関わらず。壁も汚れず、地面に跡が無いのは、そうする必要がない上、蹴る壁はすり抜けてしまうからです。」
 二人は校舎に侵入した。


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【鈴木皇帝の冒険】第三章


 校舎に入ると、廊下には複数の足跡。何人もの生徒がここを利用しているのだろう。これでは黒服の足跡は追えない。
「先輩、黒服さんがどこへ行ったかまでは推理できないんですか?」
「うーむ。この足跡は馬鹿にでかいな。」足跡を観察する皇帝。自分の足を重ねている。

 渡辺が皇帝を無視して進もうとする。
「ん?ありゃあワタ君のダチじゃないかな?」皇帝の声。
 廊下の先にエプロン姿の川上しずきの姿が見えた。
 しずきはこちらの姿を見つけ、近づいてくる。「あ、あれ?千代子ちゃん、どうやってそんな所まで……?」

「あ……あはは。それよりさ、黒服の人、こっちから来なかった?」渡辺がよく見ると、しずきは手に空の包み紙を遊ばせている。渡辺がお土産に包んでもらったものと同じものだ。どうやら彼女は、あちこちの部活に試食をしてもらいに歩き回っていたらしい。
「うーん、今度も見なかったけど。」

 しずきは最近まで人間だった。魔人になる前から料理部にいたが、魔人に覚醒してからはその能力で、今まで以上に美味しいお菓子を作れるようになった。狂人ばかりの料理部でもかなりまともな人物だ。

 渡辺はしずきを連れ、廊下を歩き始めた。その道すがらこれまでの経緯を説明する。
「『 U 』の字と黒服っていうと……世界格闘大会の勧誘?」
「うん、その可能性はあるかも。」黒服による勧誘。既に校内では何人もの格闘家が勧誘されている。バリツでそれなりの強さをほこる皇帝が、勧誘されたとしてもおかしくはない。

 皇帝も後ろからついてくる。とにかく渡辺はこの面倒事を早く終わらせたかった。しずきに頼んで三人で校内を捜索しようかと考えていたその時、廊下の曲がり角の先にそれを見た。
「っと……これは?」

「ど、どうしたお前ら――――――――――――ッ!?」皇帝が叫び、それに駆け寄る。

 複数の男子生徒がかたや廊下に倒れ、かたや壁にもたれかかっている。これは、先程皇帝に絡んでいた皇帝の友人たちだ。

「お、おう……エンペラーか……。」
「何があった!? 誰にやられた―――――ッ!」
「格闘大会の……勧誘だっていうから、腕っ節を見てもらおうと挑んだ結果がこのザマさ。はは。4人がかりで挑んで負けた……。」

 何故、格闘大会に勧誘されるために複数人で挑むのか。渡辺には意味がわからなかったが、何も言わないことにした。

 男子生徒はこちらを見、その後ろのしずきを見た。「おお……、料理部の子じゃないか。すまん、君にもらったお菓子、その男に挑戦料として渡しちま……ぐはっ」男子生徒はそのまま気絶した。

「お前!しっかりしろ!ウオオオオオッ ……くそっ 仇はとってやるからな!」皇帝は壁に拳を叩きつける。

「先輩、そもそも黒服の人は先輩を勧誘しに……。」

「いや、違う。」
「え?」
「犯人は黒服じゃない。別の奴だ。」皇帝が立ち上がる。
「それは、どういう……」

 渡辺が言葉を終える前に、男の叫び声が聞こえた。
「声……!」
 上階からだ。三人は走りだす。

「いいかワタ君! 黒服は君にお菓子の試食をしてもらいたいと言われて、噴水前で待っていた。待たずに逃げ出したのは何か理由があるんだろうが、少なくともその菓子をそれほど食べたいわけじゃなかったんだろう。それが我々に見つかる危険を冒しながらも、菓子を条件に戦おうなどと、するはずがない!ありえないんだ! だから、俺のダチを痛めつけたのは黒服ではないんだ!!」
「…………。」

 皇帝にしてはまともな推理だ。しかし、皇帝の推理過程は必ず外れる。それは、つまり……。


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【鈴木皇帝の冒険】第四章


 階段を駆け上る。
「ねえ、しずきさん。そのお菓子の包み紙って、どこから持ってきたの?」
「え、これ? 家にあったのを持ってきたんだけど……。」
「なるほどね。」渡辺は頷いた。もしかしてと思ったが、ありえない話ではない。

 三人が上階へ昇りつく。ここは……料理部のある階だ。
「ひ……ひぃ!!」男の悲鳴。

 料理部の見える廊下に、二人の男がいる。一人はこちらに背を向けたベージュのコートを着た大柄で屈強な男。それを見上げるのは尻餅をついた、帽子にサングラスの黒服男。大柄の男が口を開く。
「おいおい、ちょっと手を振っただけでこれかい。あんた、これが欲しいんじゃないのか?」大きなその手に摘まれているのは、確かにしずきの作ったお菓子、包み紙に入ったビスケットだ。

「う、うるさい! アンタ!それを誰から奪ったんだ! 場合によっては……。」黒服が叫ぶ。


「はぁ――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!」空気を読まず、その間に割って入る皇帝。マントが翻る。


「お前が犯人だな! 俺と勝負しろォッ!!」黒服を無視し、大柄の男にびしりと指を突き出す。
「おっと、また面白そうなのが来たね。良いぜ。だがアンタが俺の時間を奪えるほどの強さだという保証もない。……俺が勝ったら、何かもらえるのかな?」大男が言う。
「現金な奴だな!いいぜ! ワタ君のもっているお菓子をやろう!!」

「勝手に決めるな!!」渡辺が叫ぶ。

「さぁ見せてやるぜ! 俺の推理力、バリツの力!」皇帝がステッキをくるくると振り回し、構える。

「ほう、希望崎にはバリツ使いが多いな。」大男はこぶしを構えた。


Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ■Ⅰ


「お父さん、どうしてここに!?」しずきが、こちらに逃げてきた黒服に駆け寄る。

 渡辺は戦いを始めた皇帝と大男を一瞥すると、しずきとその黒服の「父」に目をやった。「川上さん……しずきさんのお父さんですね。さっきはちゃんと挨拶できなくて、すみません。」
「いえ、こちらこそちゃんと説明せずに……。」黒服の川上父が帽子とサングラスを外し、頭を下げる。

 渡辺は鞄からお菓子をとりだし、その包み紙を見る。「なるほど、先輩がみた『 U 』の字ってのは、これのことですね。」
「あ、そっか……うちの店のマークね。」しずきが言う。
 「みかづきベーカリー」はその名の通り三日月型のクロワッサンが売りのパン屋だ。その店のマークはUの字に曲がった三日月の形をしている。

「え、ええ。鈴木さんと渡辺さんは常連さんですから、これを渡しておきたかったんです。」川上父が懐から封筒に入った紙を取り出す。『みかづきベーカリー閉店セール』と描かれたチラシ。「お世話になった魔人さん全員に渡しているんですよ。」

「本当にスミマセン。普段と違う格好で、わからなくって……。」渡辺が頭を下げる。
「いえ、近所の人にばれないよう、変装した結果なので、仕方ありません。」川上父がまたも頭を下げた。
 変人に話しかけられることの多い渡辺は、川上父が話しかけてきても、普通に対応してしまった。向こうもこっちに気づいているものとして、話を続けてしまったのだろう。

 事の次第は以下のとおりである。
 半年前、みかづきベーカリーの一人娘川上しずきが魔人に覚醒した。


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 床に落としたステッキをカシャリと踏みつけ、飛び上がらせる。
「……ッ」
 大男の顎に命中した。その隙をつき、胸に正拳を叩きこむも、大きな腕で阻まれる。
「っと。動きの読めない男だな。」
「――推理とは!!根性!夢!そして愛ッ!!」抽象的な言葉を繰り返しながら、皇帝は足蹴りを繰り出す。


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 魔人は社会的に抑圧されている。それは、希望崎学園周辺の街でも変わらない。生徒会の管理があるとはいえ、学園に巣食う不良魔人の被害をまともに受ける街の人々からすれば、魔人は忌むべき存在だ。
 もともと「みかづきベーカリー」は多くの魔人学生を常連に持っていた。だからといってそれで世間の風当たりが悪くなることはない。しかし、その一人娘が魔人に覚醒したとなっては別だ。しかも、危険な学園の料理部に所属しているという。たちまち店に関するあらぬ悪評が広がった。その結果やってくる客は魔人関係者ばかり。一週間後の閉店はその結果である。

「遠くに店を移転しようと考えているんです。店名も変えて。」川上父が言った。

「私はそれで、希望崎学園に残って、寮で暮らすって言ったの。半ば家出する形でね。 私がいたら、お父さんも困ると思って…。」しずきが父を見ながら話す。

「ああ、しずきさんのお父さんがあの時逃げ出したのは、それが原因だったのね……。」
 
噴水前でしずきをみた川上父は、思わず逃げ出してしまった。チラシを配る口実でここまでやってきたが、元々娘を連れ戻すのが目的だった彼は、娘を目前にして臆してしまったらしい。

「なるほど」渡辺はしずきの腕をみる。「あの血痕は……料理部での傷のせいね。」いつも通り、料理中の小爆発によるガラスの破片。切り傷に気づかず、外に出たしずきは噴水前を通っていた。父親はやってくる娘を見て逃げ出したのだ。


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 にらみ合う皇帝と男。
「ハァァ――――――ッ!」
「いちいち叫ぶなよ。」男が皇帝の拳を捌く。隙をつき、腹に腕を差し込む。
「ぐふッ――オオオっ!」皇帝はその動きを読んでいたかのように、わずかに位置をずらし、腕を脇腹に誘導する。そのまま男をこちら側に引き寄せ、胸を狙い撃つ。男が壁に叩きつけられる。
「―――ッ おお……急に動きがよくなるのは、一体どういう理屈だ?」
「これが俺の推理だ!」
「はぁ、そうかい……。」


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「うん……美味い!」クッキーを口にする川上父。渡辺がしずきにもらったものだ。「やはり、お前は才能があるな。」川上父は手にした包み紙。みかづきベーカリーのロゴの入ったそれをくしゃくしゃと丸めた。しずきに向き直る。「すまん。しずき。」

「……お父さん?」

「お前が学園に残ると聞いた時、正直俺はほっとしてしまった。これで、移転先で魔人の噂が広がることがないだろうと……お前の幸せの為だと、自分に言い訳をした。だが今改めて気付いた、お前にはやはり料理の才能がある。魔人に覚醒してからは、俺なんかよりも美味くパンが作れるようになった……。すまん。この通りだ。」オーナーは実の娘に向けて、ぴしりと頭を下げた。「移転先でお前の噂が広がることもあると思う。それでも何とかする。俺たちと一緒に、来てくれないか。美味しいパンの作り方を、教えて欲しい。」

「アッハッハ!」皇帝が笑う。「おお!親が娘に頭を下げているぞ川上しずき君!さあこの感動的な状況で君はどうでるー!?」
「先輩ちょっと黙っていて下さい。 ていうか、そっちはどうなったんですか?」

「もちろん勝利したぞ!見ろ!」皇帝が指さす先には、床に叩きつけられ伸びた大男の姿。「奴も魔人だったようだが、勝負の鍵は、これかな!」皇帝が足を上げ、革靴をみせる。裏底に鋭いスパイクの入った奇妙な靴だ。「魔人ってのはその怪力に反して、体重が少なすぎると常々思っていた。これじゃあせっかくの怪力を生かせない。」足を踏み鳴らす。かちりと靴が床に食い込み、固定された。「昨日作ってみたんだ。どうだ、よくできてるだろ!」

「いつの間にこんなものを……。」こういう面では意外と器用なのだな。と感心した。

「あの大男は自分の体重に自身があったようで、靴に工夫はしていなかったようだなぁ!」皇帝が偉そうに述べた。彼は抜け道から校舎に侵入したとき、大きな靴跡をじっと観察していた。その時からその男の戦闘スタイルについて理解していたかどうかは……定かではない。

 親子を眺める皇帝。「さて、これでわかったろうワタ君! 即ち、推理とは愛情だぜ!」
「今回私たちは何もしていませんけどね。」渡辺はため息をつく。

「そうそうワタ君、これは推理でなく推測だが。 噴水前の血痕の正体がわかったぞ! 言いにくいが、おそらくあれは君のイライラの原因……いだっ!」
 渡辺が皇帝からステッキを奪いくるくると回し、虫眼鏡部分で皇帝の眉間を叩いた。虫眼鏡が初めて役に立った瞬間である。

 皇帝が騒いでいる間に、親子の話し合いは決着がついたようだ。結局しずきは学園に残るらしい。しずき本人は、パン屋よりも菓子職人になりたいそうだ。学園の料理部で修行して、果たしてまともな菓子職人になれるかどうか……しずきなら大丈夫だろうか。渡辺は思う。
 ただそれでも親子の確執は晴れたらしく、結果オーライだろうと、渡辺は納得した。
「お世話になりました。」そう言い残し、川上父は帰って行った。


「痛ててて……アンタ、なかなかやるじゃないか。」やがて大男が立ち上がる。ベージュのコートを脱ぎ捨てると、黒服のスーツ姿。「知っているかもしれんが、俺はこういう者だ。」皇帝へ名刺を差し出した。


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 鈴木皇帝宛てに世界格闘大会の招待状が届いたのは、それから一週間後の事だった。


【鈴木皇帝の冒険】<了>
  1. 2012/01/03(火) 08:34:38|
  2. 鈴木皇帝
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